team であるということ

ジャニーズを見ていると、内輪ネタってやっぱり盛り上がるんだなと思うタイミングが多い。今は亡きジャニー喜多川氏の話題に始まり、先輩グループの曲ネタやモノマネ、フレッシュJr. の黄色い衣装に怖い振付師さん、堀越高校。ジャニーズという概念は既に人口に膾炙しているし、ジャニオタ人口は相当膨れ上がっているとは思うが、それでも、こうした「内輪」ノリはどこまでいっても「内輪」のものだと感じる。

それを批判しようというわけではなく、ファンダムがどこまで大きくなっても「内輪」を保ち続けられるところこそがジャニーズの強みなのではないかという趣旨の文章である。

ジャニーズの「内輪」の核とも言えるのが、音楽サブスクリプションサービスに対する距離感だと思う。嵐を除いて、ジャニーズグループの楽曲はほとんどサブスクリプションサービスに解禁されていない。基本的に、ジャニーズの楽曲は、CDを買わないと聴くことすらできないのである。今は多くの公式YouTubeチャンネルが開設され、過去のMVやライブ映像も解禁されているが、アルバム曲やカップリングはほとんど聴くことができない。そもそも、YouTubeは音楽に特化したサービスではないので、そういった意味でもジャニーズの楽曲に対するハードルは想像するほど下がっていないのかもしれないと思う*1

サブスク解禁してほしい、と言うファンは多い。私も1年前くらいまではぼんやりと「はやくサブスク解禁すればいいのに」と思っていた。のだけれど、この1年弱SixTONESを追いかけていて、少し意見が変わってきた。

SixTONESはよく喋るグループだ。長いと評判のライブMCは特に象徴的だし、YouTubeの撮影もまあまあ押すことが多いらしい。ラジオという喋りに特化したコンテンツを抱えているのもそれに拍車をかけているように思う。あくまで憶測だが、ファンに見えるところでもそうでないところでも、同じようなテンションと分量で(それも恐らく意識的に)話し続けてくれる人たちだ。その結果として、「ひえおじ」「青ソニ」などの独自の愛称が生まれ、共有されていくことになる。まさに「内輪ノリ」である。知らない人は「ひえおじ」と聞いても何のことやらさっぱりわからないだろう。便利な呼称であることはもちろんだが、その「内輪」感が楽しくて盛り上がるからこそ、ここまで浸透しているのではないかと思う。

前述したのはラジオの話だが、彼らの「内輪ノリ」が特に顕著なのはライブMCだろう。私は彼らのライブMCレポを読むのが好きなのだが、面白いくらい内輪ネタのオンパレードである。WHIP THATの即興振付なんかはデビュー後に誕生した流れでわかりやすいものだが、こんなのは序の口で、何年も前のCMやドラマの話もガンガンするし、何ならきょもじゅり以外誰も知らない(何なら本人もうろ覚えだった)高校時代の喧嘩エピソードをいきなり暴露したりもする。いくらなんでも内輪ネタすぎない?

アリーナクラスの会場を埋めるファンのうち、どのくらいデビュー前*2から知っている人がいるのかはわからないけれど、そうでない人が無視できない規模で存在することは私にだってわかる。私自身、SixTONESと出会って1年も経ってないひよっこだし。だけど、彼らは同窓会でもしらけるレベルの内輪ネタをアリーナクラスで共有できるところまで持っていくのである。スベることや収拾つかなくなることもあるだろうが、大事なのはそこではない。「置いてかれてる」「知らない話してる」という気持ちになる人を少なく抑えるという点で、SixTONESは内輪ネタのプロフェッショナルだと思っている。

まず、樹さんのスムーズすぎる補足が強い。話の流れを邪魔することなく、さらっと「◯◯のことね」と付け加える場合もあるし、「それ◯◯な!誰も知らねぇよ!」みたいなツッコミに変化している場合もあるが、何にせよどんなときでも見事な手腕で注釈をつけてくれるのが樹さんだ。北斗くんも彼に近い動きをすることが多いが、メインでフォローに回っているのは樹さんだと思う。話の理解も言葉選びも的確で素早い。そもそもジェシーのボケはジェシーしかいない世界の内輪ネタみたいなところがあるので、それを日々拾い続けてる樹さんがこの作業に長けているのは当たり前なのかもしれない。

京本さんは内輪ネタを創り出すのがめちゃくちゃ上手いと思う。トマトネタが顕著だが、彼は自分の情報を相手にインプットさせるのが上手いし、それを派生させるときのオリジナリティが強すぎるので、めちゃくちゃ面白いうえに予想できない内輪ネタを誕生させることが多い。才能である。北斗くんも創る側が多いが、世界観が練られているのである程度予想がつく。「お約束」的な内輪ネタが得意なのが北斗くんだと思う。末ズのボケは癖があるけど、他のメンバーが拾って一般化を図ったり話を発展させたり単にウケたりすることで上手く収まる(収まらないときもある)。

特異なのが髙地さんで、彼は他人の創った内輪にするっと入り込むのが妙に上手いタイプな気がする。メンバーが始めたノリに上手く乗っかって、ぽんとレールを敷く。このひと手間が挟まることで大事故が減り、他のメンバーも流れに乗りやすくなるのである。YouTubeの車内オリジナルゲームなんかは特に、髙地さんのワンクッションありきで成立している印象がある。方向性をガチガチに固めることはしないのに、なぜかバランスがよくなるのが不思議である。樹さんとは真逆のアプローチで内輪ネタを成立させるのが髙地さんだ。

ここまでつらつら書いてきたが、内輪ネタで盛り上がるのは何もSixTONESに限ったことではない。私は世の中のあらゆる盛り上がりは内輪ネタだと思っている*3。確実に盛り上がれる反面、内輪ネタは外野を冷めさせる原因になりかねない。だけど、彼らは外野に「楽しそうだからあの輪に入りたい」と思わせる求心力がある。あとから来た人を内輪ノリで取りこぼさないような動きをできる人たちでもある。だからこそ、彼らは内輪ネタのプロフェッショナルだと言いたいのだ。

SixTONESは、仲いい奴らで楽しくやってるだけ、というブランディングをしているグループだと思う。事実との距離はさておき、そういう面を意識的に見せようという意図を感じる。そして、そこに惹かれているファンも多いだろう。このイメージを維持するのであれば、「内輪ノリ」を使いこなせるのは大きな武器だと思う。より多くの人に「内輪」としての意識を持たせることができれば、ファンダムは大きくなるし、持つ力も強くなる。team SixTONESという呼び名はまさに、彼らのこうした在り方を示しているように思う。

話をだいぶ戻すが、ファンを囲い込むにあたって「内輪」意識を持たせることが効果を発揮するのであれば、「CDを買わないと曲が聴けない」という今の環境はある意味大正解なのかもしれない。身も蓋もないことを言うが、CDを買う気のない層を取り込むためにサブスクを解禁するより、踏み込んでくる意志のあるファンに「内輪」意識を持たせることの方が大事なのではないかと思うのだ。お金をかけることだけが応援ではないが、大前提としてお金を出すファンがいない限り彼らの活動は大きくならない。数千円のCDを買うか、買わないか。この選択をまず最初に迫ることで、「このグループは自分の領域」という意識を手っ取り早く持たせられるのは強力なアドバンテージになるように思う。愛着を持たせて、特別感を演出して、自分事にしてもらうことで、ファンが増えるのだとしたら。CDを買う人の少ないこの時代に、わざわざCDを買わせるという行為は絶大な効果を発揮するのではないだろうか。サブスクという道を塞ぐことで、打率は間違いなく上がるのではないだろうか。実際どんな意図と影響があるのかは一介のファンには知りようもないけれど、そういう効果もあるのかもしれないなと思う。

ファンダムがもっと大きくなってきたら、内輪意識を持たせつつも幅広い人をすくい上げられるような運営をして行く必要が出てくるだろう。ゲリラで行われるインスタライブなんかはけっこう紙一重なところがあって、内輪意識を強める効果が強いぶん、逃した人の疎外感や反感を生み出しやすいように思う。

彼らがどこまで広い範囲の人を輪の中に取り込めるかは未知数だが、少しずつ着実にteamを大きくしていることは間違いない。これはファンに限らず、むしろスタッフサイドの方々や業界の先輩方の方が取り込まれていってるのではないかと感じている。内輪意識を持って彼らを支えてくれるスタッフが多いことは心強いが、それが周りを冷めさせたり、彼らを動きづらくさせたりするような内輪ノリに転じることがないといいなと思う。この懸念は自分含むファンにも言えることで、彼らのことを勝手に代弁したり、過剰なイジりをしたりすることがないように気をつけたい。私はずっとSixTONESを囲む輪の中にいたいから、その輪が良いかたちで大きくなっていくようにできることをしたいと思っている。それが私にとって、team SixTONESであるということだ。

 

 

 

*1:もちろん大きな進歩であることには変わりない

*2:デビュー前といっても幅が広すぎるのだが、便宜上こう分けた

*3:過激派?